医療保険

生保の定額型には「3つの弱点」がある

 六月一四日、医療制度改革関連法が国会で成立した。これにより、一〇月からは現役並み所得のある七〇歳以上の高齢者の患者負担が二割から三割にアップ、療養病床に入院する際の食事・訳注費が自己負担化される。二〇〇八年四月からは、七〇〜七四歳の患者負担が現行の一割から二割に引き上げられる。

 医寮費の自己負担額は今後も増え続けることが予想されるが、そこへ民間の医恰保険のテレビCMが便乗しているかのようだ。誰だって入院時を考えて不安になるのは当然のこと。そのため民間の医僚保険に加入している入も多いはずだが、いざというとき、本当にあなたを守ってくれるのだろうか。

 医療保険とは、病気やケガによる入院や手術などにともなう負担に対する保障商品だ。ひと昔前まで、医療保障といえば定期付き終身保険などの死亡保障子契約)の。オマケ〃の医療特約が一般的だった。しかし、外資系生保が独占していた第三分野の保険(医療保険、ガン保険、介護保険など)が○一年七月に完全解禁。以降、国内生保でも単体の医療保険を販売できるようになり、今や保険業界全体のドル箱として成長を続けている。

 さて、その医療保険だが、日本で販売されているタイプは「入院したら一日めなりいくら」という入院給付全を基準にした定額型がほとんど。入院給付合日額五〇〇〇円の場合、一〇日入院するともらえるのは五万円。さらに、手術した場合はその種類に応じて入院給付余のー〇倍、二〇倍、四〇倍などの手術給付金が上乗せされる。このほか、通院給付金、死亡給付合などの保障もあるが、いずれも給行金は定額だ。

 このように「一目あたりいくら」というのは、金額がイメージしやすく安心感はある。しかし、給付金と実際にかかった費用の間に過不足が生ずることが多く、治療費用や入院日数の実態に合っていない。その理由として、主に入っていい医療保険の吟味の仕方頻繁に変更 される公的医療保険制度、悪い医療保険を見分ける方法を解説しています。入院日数の短縮化と医療技術の進歩、保険インフレに対応できない、の三点が挙げられる。

 まず入っていい医療保険の吟味の仕方だが、定額型の医療保険について必要保障額などというものが計算されることも少なくないが、それは公的な医療保険をベースとするのが一般的だ。以下はその典型例である。公的健康保険には高額療養費という制度があり、∵刀月に支払った自己負担額が一定額以上になると所得に応じた払い戻しがある。月収五六万円未満の一般所得者の場合、一カ月に医療費がー〇〇万円かかっても最終的な自己負担額は約八万円。これに食事療養費(一目あたり七八〇円)などを加えて日割りすると、入院給付金は日額五〇〇〇円あれば、最低限の保障は確保できるというわけだ(高額療養費の制度は、今年一〇月に見直される。

 しかし、この計算のもとになる公的な医療保険は頻繁に改革が行われている。以前は無料だった会社員(七〇歳未満)の窓口負担は、一九八四年に一割、九七年に二割、○三年に三割にアップ。高額療養費の自己負担上限もジワジワと上がっており、今後、負担が増えることはあっても減ることは考えにくい。つまり、「日額五〇〇〇円の入院給付金」という目安は現行の医療制度には対応できても、制度が変わるとまったく意味のない数字になってしまうかもしれないのだ。

 悪い医療保険を見分ける方法を解説しています。については、厚生労働省の「患者調査」(○二年度)によると、七五年に五五・八日だった平均在院日数(全年齢の総数)は年々短縮され、九〇年に四四・九日、○二年には三七・九日となった。この傾向は若い世代ほど顕著で、○二年の平均在院口数は三五〜四四歳が二二・二日、二五〜三四歳が十三・七日だ。

 その一方で、医療技術の進歩とともに公的な医療保険が適用されない治療も出てきており、医療費そのものは上昇傾向だ。たとえば、進行性筋ジストロフィーのDNA診断、脳死肝臓移植手術などは高度先進医療に指定され保険診療との併用が可能になっている。この場合、診察、検査、投薬などは公的医療保険が適用されるが、手術や特別な機器の使用料などの高度先進医療部分は患者の全額自己負担だ。また、自由診療を受ける場合は、公的医療保険がまったく適用されない。

 つまり、今後は「入院日数は短いが、医療費は高くなる」傾向が予測される。「一日いくら」の定額型の医療保険で対応できるかどうか、はなはだ疑問だ。

 何よりも怖いのは保険。インフレとは物の価格が上がり、お金の価値が下がること。戦後、日本でもインフレが進み、消費者物価指数(総合)は七〇年から○○年までの三〇年間で三∴四倍に上昇した。つまり、三〇年前にー〇〇〇円で買えたものが、現在は三一四〇円出さないと買えなくなったというわけだ。

実費のみ補償する損保型有利性とは

 ここ数年はデフレ傾向にあった日本経済も、回復基調だ。昭和の高度成長期ほどではないが、この先三〇年間は緩やかなインフいに転じていくだろう。しかし、定額型の医療保険は物価が上昇しても、もらえる入院給付合の額は契約時のままだ。今は一日あたり五〇〇〇円で足りていても、三〇年後の五〇〇〇円にどれだけの価値があるかは疑わしい。高齢になるほど病気になる確率は高くなる。医療保険の必要性も高まる時期に充分な保障が得られないとしたら・・。医療保険に加入する最大の目的は、入院が長引いて収入が減ったり、高額な医療費がかかった場合の経済的リスクをカバーすることだ。しかし、これまでの検証から定額型の医療保険では、実際にかかる医療費との問に過不足が生じる可能性が高いことは否めない。

 そこで、オススメしたいのが実損填補型の「医療費用保険」である。これは損害保険会社が扱う医療保険で、公的医療保険の自己負担額、高度先進医療費、食事療養費、差額ベッド代、付き添いの交通費など、入院時にかかった実費を補償してもらえる。このタイプなら、高額な医療費がかかった場介でも入院費用のほとんどを賄える。かかった費用以上は受け取れず、保険太りはできないが、いつでも基本的に過不足なく補償を受けられるので、お金の心配をせずに治療を受けられるのがメリット。保険料も理にかなっており、定額型より割安な場合もある。

 イギリスなど保険先進国は、この実損填補やである医療費用保険が主流だ。少数とはいえ日本でも、富士火災海上保険の「みんなの健保」、AIU保険の「スーパー上乗せ健保」など損保会社で土工要商品として取り扱われている医療費用保険(特約)がある。たとえば、最高300万円の医療費用保険金、日額三〇〇〇円の入院保険金などがついて、四〇歳男性の月払い保険料は六〇〇〇円程度だ。

 いましばらく時間がかかるかもしれないが、今後、医療費の負担の増加、自由診療分野の拡大などから、日本で医療費用保険に対するニーズが高まり、普及していくことも予想される。また、日数が短縮化する傾向にある入院よりも、在宅医療などがより広く補償されるような商品の開発も期待される。今後の成り行きを見ながら、無駄なく医療保障(補償)を確保するために、医療費用保険も視野に入れた保険の活用が望ましい。

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